挑むあなたへ

受験生のあなたへ。あなたは孤独ではありません。こんなに多くの人たちが、受験生を心の底から応援する冬は ないでしょう。

この冬の受験生活は、これまでにないほど健康管理に気を遣い、不安や孤独に耐えることの多い日々が続きます。

さらに感染症の影響で、入学試験が中止になる高校や、二次入試を中止にする大学などがすでに出ています。新しい大学入試制度一期生と言われながらも、この予想外の展開に、これでもかとばかりに振り回される受験生の不安を思うと、胸の奥が押し込められるような痛みを感じます。

年若い人にとって、抱えきれないほどのプレッシャーや、不安の量が大きすぎて 心の中のコップの水が、もういっぱいいっぱいになっているのではないか、そんな風に、見も知らぬ受験生の気持ちを思い、心配しているのは、きっと私だけではないのでしよう。

毎年、受験の季節が来るたびに、世の中の多くの大人が「自分には関係ない」という風を装いながら、実は街中で見かける塾帰りの小学生や、思いつめた表情をした中学生や高校生の姿に、かつての自分自身を重ね、心の中で応援していることに、あなたは気づいているでしょうか。

ほとんどすべての大人達が、その人生のどこかで、それぞれの受験生活で、自分なりに不安に耐え、苦しみを乗り越えた経験を持っているからなのだと思います。そしてその苦しかった思い出を、誰にも語らず、ひとりで抱えている人は多いのです。だから胸が痛むのです。みんなが胸を痛めて、あなたを見守っているのです。

私の場合は、「共通テスト」にあたる、当時の「共通一次試験」を受けたとき、隣の席に座っていた見知らぬ人が、体の動きを止めたり私語や独り言を慎んだりすることが苦手な人だったらしく、試験日程の間、ずっとその人に話しかけられて困ったことを覚えています。ニュースで「マスク注意拒否」により失格になった受験生の報道を耳にしたときに、ふとあの日のことを思いだしました。たまたまその会場に居合わせ、集中をそがれながら受験せざるを得なかった周りの受験生についてはあまり語られませんが、そんな受験生が、確かにいたはずです。その人たちは、その条件の中で、最善の努力を尽くしたのでしょうか。

さまざまな出来事があり、予想外の受験を乗り越え、目指していたのと違う場所に着陸してしまうこともあるのが、この世界の現実なのでしょう。

それでも私は思うのです。あの試験会場でのあの出会いは、私に大切な発見を授けてくれるきっかけになったし、あの春、自分の思いとは違う着陸場所に足をつけたからこそ見える景色もあったのではないでしょうか。運命が与えてくれたこの人生を、私は気に入っています。もしもあのとき、何もかも自分の思い通りになっていたとして、その先にあるものが今以上のしあわせかどうかは誰にもわからないのです。もしかしたら、すべては今のしあわせに続くための、完璧なプログラムかもしれません。だから 恐れずに 前に進んで欲しいのです。

受験生のあなたへ

こんなにも息苦しい季節を耐え抜いているあなたを尊敬します。それだけで、すでにあなたには素晴らしい経験値があると私は思います。どうか、そんな自分に誇りを持って、勇気を出してください。この季節の先になにが待っているのか、それは誰にもわからないけれど、運命があなたを連れて行ってくれる先にあるものは、たぶんあなたに最良の未来なのです。それを信じてただただ最善を尽くすあなたを応援します。あなたをこんなにも振り回す運命を横目に見ながら、どうか前に前に進んでください。

 

 

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