ある寒い朝に

2019年の一月のこと。

ある朝、目がさめたら、空気がきりっと冷たく冷えていました。水道の蛇口を一番あたたかい方にねじって、お湯を出しました。手を包み込む温かいお湯の感触に、「ああ、ありがたい」という思いがわきました。

仕事始めの朝です。今日一日の仕事を思いました。私を待っている、必要としてくれる仕事場があること、仕事が終われば、ここにいごごちのよい住処があること、そんなことのすべてに「ありがたいな」という気持ちが、ある日の朝、ふっと心の中に、わいてきたのでした。

「感謝」でした。その「感謝」という感情に「はじめまして」と心の中で挨拶したいくらい、私にはものめずらしい瞬間なのでした。50年以上も生きてきて、はじめて、これがその「感謝」という気持ちなのだと実感したのでした。

「感謝は大切、感謝しなさい」と、学校の先生や、両親からいつも教えられてきた私。テレビに出ているアスリートは決まって「周りの方や、応援してくれるみなさんに感謝します」と言っていました。その「感謝」という言葉の定義を、頭ではわかっていたつもりでしたが、心からそれを感じたことは一度もありませんでした。

たぶん私は、どこかおかしい人間だったのでしょう。でも、「感謝」って、「教えられて」「する」ものなのでしょうか。「感謝」は「しよう」と思わなくても、ある瞬間、それぞれの心に、ふっと「わいてくる」ものなのではないかな、と、自分で感じてみて、あらためてそう思ったのでした。

ある寒い朝、私はやっと、その感情を心で理解することができました。

幸せに一歩近づいた気がします。

 

 

 

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