きりかぶを見上げて(原風景1)

うまれてからの一番ふるい記憶をたどると

そこにはいつも「きりかぶ」がありました。

一面に広がる田んぼの向こうに、空にむかってたちあがる

「切り株の形をした山」がそびえていて

「きりかぶ山」と呼ばれていたのでした。

私の生まれた、九州の内陸部の小さな田舎町には

こんな伝説がありました。

昔々、ここの町の真ん中に、大きな「くすのき」があり、

あまりにも大きすぎた、その木のせいで、町は暗くて、作物も育たない、

人々は困り果て、大男に頼んでその「くすのき」を切り倒した。

大樹が切り倒されると、町は急に「夜明け」を迎えたように明るくなった。

幼かった私の、目の前にそびえる「きりかぶ山」はそのときの跡だとか。

私は、半信半疑でその山を見上げていました。

来る日も来る日も、目にとびこんでくる「きりかぶ山」を見上げるたび

心のどこかに、半透明の大樹がそびえ、半透明の巨人が視界をよぎったのでした。

原風景 という言葉を聞くたびに、私はあの景色を思い出すのです。

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