新しい日々を生きる~慣習を手放す~その2

 

冠婚葬祭でも、その土地土地に古くから伝わる独特のしきたりがあるようです。

例えば、沖縄地方のお葬式では、男性はこちら、女性はこちらという風に、別々にご案内され、それぞれ分かれて指定の席に座るそうですが、これは、沖縄ならではの、とてもめずらしいしきたりだと思います。

沖縄の、リエさんという友人が、お父さんを亡くされたときのお話が印象に残っています。彼女は若い女性ですが、長子ということで、喪主としてお葬式を取り仕切ったそうです。リエさんは、例の「しきたり」に違和感を持ち「男女別席はやめましょう」と会館の係の人にお願いし、性別で分けない参列席で葬儀を行ったそうです。会葬の皆さんはそれほど混乱せず、無事に式は終わったそうです。しきたりを変えるのは、力のいることでしょうのに、勇気ある一歩を踏み出したリエさんを尊敬します。ただ、残念なことに、その後のお葬式で、リエさんに倣う人が現れることはなく、今でも沖縄では「女性席、男性席」に分かれたお葬式が続いているそうです。「冠婚葬祭のしきたり」の根強さをうかがわせるお話でした。ただ、私たちの子どもの頃、当たり前とされていた葬儀における「お清め塩」なども、いつからか「止めましょう」という動きが広がり、今ではすっかり見なくなりました。その気になれば、永年の慣習だって止めることはできるのだと思うのです。

インドに、ある女の子がいました。彼女のお母さんは、お魚を焼くとき、必ず、頭を切り、尻尾を切ってから大きいお鍋に入れて焼きます。そのまま焼いて出せばいいのにと思った彼女は、「どうしてそんなことをするの?」とお母さんに問いかけます。母はこう答えます。「おまえのおばあちゃんがそうしていたからだよ」。女の子は、おばあちゃんの家に行き、おばあちゃんに訊ねてみました。「どうしてそんなことするの?」おばあちゃんはこう答えました。「おまえのひいおばあちゃんがそうしていたからだよ。」女の子は、ひいおばあちゃんの家に行き、訊ねました。「どうしてそんなことするの?」ひいおばあちゃんは答えました。「私の持っているお鍋が小さくてね、頭と尻尾を切らないと、お魚が入らないからだよ」と。

つまり、お母さんも、おばあちゃんも、その行動に意味はないのにもかかわらず、ただ、先代がやっていたというだけの理由で、行動を踏襲していた、ということでした。

このお話は、ファザーリングジャパン理事でワンダライフ代表の林田香織さんの講演会でお聴きした話ですが、この世にある慣習なんて、ほとんどがそういった「大した理由もなく、何も考えず、前の人のしたとおり、前年度踏襲で行われてる行動」が多いのではないでしょうか。

「この行動はなぜするのか?」と3度自分に問いかけ、必要ない、ためにならないと思った行動を手放していきましょう、そうすることで、時間に余白ができ、新しい知恵と行動が生まれます。そんな提案をしてくれたのが林田さんでした。

「前年度踏襲」という名の慣習を年々繰り返しているうちに、身のまわりの多くに『前世紀踏襲』の慣習があふれる世の中となってしまいました。この世紀に生まれた若者たちにしてみれば「なにそれ?」と思うような慣習でも、「そういうものだ!」という空気圧で従わせてしまう、この国のかたくなさには、すさまじささえ感じることがありますが、嫌だな、重いなと思う慣習には、何かもう無理があるのではないかと思います。

「慣習は法律よりも強い」と言った人がいましたが、慣習を手放したら本当に罰を受けるのかどうか、いっしょに試しにやってみませんか。憲法によって保障されている「自己決定権」「幸福追求権」「男女の平等」「思想信条の自由」をきちんとみつめてみれば、慣習を手放す私たちは意外と許されるかもしれないし、私たちを抑圧し、支配し、強要する慣習の方が、むしろ違憲なのでしょう。

過度に空気を読みすぎたり、過度に自分自身を評価したり意識しすぎたりせず、試しに慣習を手放してみようと思います。我慢させられることが少なくなれば、世界はもっと住みやすくなるような気がするのです。

 

 

4 Replies to “新しい日々を生きる~慣習を手放す~その2”

  1. リエです(笑)
    唇に皿をはめるエチオピアのムルシ族も首に輪っかを連ねるタイの首長族も若い世代はやらなくなっているそうです。
    2020年~自分で考える。行動する。ことがより求められたり、それをうけて変わっていく…ような時代の訪れを感じます。
    迷ったら人権のものさしではかってみます~が、それでも迷った時は一緒に考えてください~♪

    1. リエさんへ
      コメントありがとうございます。ひとりひとりが勇気を出して、一歩ずつ踏み出すことで、近未来に、現在の慣習を笑いながら思い出す日がくると確信しています。人権感覚があなたの勇気を支えているんですね。素晴らしいと思います。応援します。

  2. あけましておめでとうございます。
    「慣習を手放す」ってぴったりな表現ですね。同じようなことを考える人がいて心強いです。私も随分前から、自分が変だなと思う慣習を手放しています。何か言われるんじゃないかと気にしているのは、自分だったなあと気づいたからです。

    1. orionさんへ
      あけましておめでとうございます。
      慣習を手放したために、お正月休みは純粋に私のものになりました。もらった時間は本当に愛おしいものです。
      画像は、昨日の「山登り」の途中の山道で撮影した森林の道です。登りきった山頂から、晴れ渡った空と海と、四国の山々が見えました。私には、この世界に対する感謝しかありません。ありがたいです。

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