あまりにも愚かで、わざとらしい子どもだった私にとって、毎日は「名誉挽回を目指す日」の連続でした。
昨日の失敗を回復して、あまりある手柄をたてたい。そしていつの日か、父や母や姉たちに存在を認められたいと、毎日願って生きていました。
7歳であの土地を去ったのは確かだから、私は確かに幼かったのでした。それなのに私は、風呂のたき付けさえしていたのです。今でも思い出すのは、マッチを擦れるようになったときのこと、薪に火を燃え移らせるために、新聞紙を丸めたこと、団扇で風を送ったこと、幻のように消えては浮かぶ、ゆらめく炎の姿に、不思議なほど、心を惹かれていたことです。
「となりのトトロ」を見て、一番印象に残ったのは、さつきが風呂を焚き付けるシーンです。私にはリアルな記憶です。私には、トトロも猫バスも現れなかったけれど、私には、アニメ以上の世界があります。肌をさすひややかな空気、立ち上る煙の匂い、ぱちぱちとはぜる音、すべてが、私だけの宝の記憶なのです。