愛しいモノたち その3

不安に支配され、どうしようもなくこころがざわつく日、家にも職場にも居場所がないような気になります。この世のどこにもいたくない、心が塞いでしかたがない、そんなとき、私は休暇を取り、仕事場を離れて、クルマに乗り込み、ハンドルを握ります。

行き先はいつも、クルマで40分くらいの場所にある神社です。パワースポットとして有名な、『あの』神社です。芸能人や皇室の方々がお忍びで訪れるそうですが、最近では某首相夫人が訪れ、炎上する形で話題になってしまいました。

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昭和の遺物を葬るとき 

私は、贈り物をすることが苦手です。贈る側にとっては、デパートで選んで包装してもらえば、それきり見ることもないまま終わりますが、もらった方にしてみれば、それからの人生の長い時間、見るたびにくれた人のことを思い出し、使い込んで古びても、捨てるに忍びなくて捨てることもできず、まして使わずに「タンスの肥やし」にしたままのモノたちは、もっと申しわけなくて捨てることができず、そんな「モノたちの末路」を思うと、「長く記念になるもの」を贈るなんて、私には恐ろしくてできません。

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続・自分レスキュー その6 (素直な心の)

チエコさんとの付き合いは、ヘアカットをしながら、世間話をする、いつもの関係に戻りました。ただ、あれから、メンタルケア後の私の生活が、どんな風に変化したかを語り合うのも楽しみのひとつになりました。

ある日、ヘアカット代を払うとき、チエコさんが、私にこう言いました。

「同じケアをしても、癒しに成功できない人もいるよ。あなたが心を開くことができたのは、あなたが素直な人だから。」

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続・自分レスキュー その5(語りかける)

空気のなかに、近づいてくる雨の匂いを感じます。春から夏へと空気が変わっていくのを感じながら、ひとり机に向かっています。心の中で、私は、父に、そして母に、こころで語りかけます。

お父さん、お母さん、私は、あなたたちにとって、どんな存在なのでしょうか。親の思い通りにならない、親不孝者の、世間的に恥ずかしい娘でしょうか。「産んで損した」娘なのでしょうか。

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続・自分レスキュー その4(ひとの心をあきらめる)

両親の子ども心を癒すというメンタルケアをしてから、脳内に不思議な現象が起こり始めました。

一昨年の夏、旅先で搭乗までの時間つぶしに見た「未来のミライ」というアニメ―ション映画の記憶が、何度も頭の中に浮かぶようになったのです。前評判も何も知らず、本当にたまたまタイミングよく始まったから見ただけの映画です。

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続・自分レスキュー その3(負の連鎖を断つ方法)

さらに私はチエコさんの声を聞きながら、目を閉じたまま、イメージを続けました。

「その部屋の奥に、ドアがあります。ドアの向こうに、お父さんがいます。さあ、お父さんにも聞いてみてください。どうして?って。」

父もまた、5歳で父を亡くし、愛着の問題を抱えた人でした。

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続・自分レスキュー その2(インナーチャイルド)

12年も通った美容室なのに、奥にある個室に入ったのは初めてでした。ふかふかの椅子に沈み込み、目を閉じて、心の中のイメージの世界に、私は入っていきます。

私は、幼い私に、もう一度会いに行ったのです。険しい表情の母に背を向けて、うつむいている5歳の私でした。

チエコさんは、インナーチャイルドの私を見守る私に問いかけます。「お母さんは、どうしてあなたに優しくできなかったのでしょうか。お母さんに、あなたがきいてみてください。どうして優しくできなかったの?って」

私は、一瞬考えました。

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続・自分レスキュー その1(メンタルケアの日常化)

私に起こり続けた変化について、話を進めることにします。

12年間通っている、行きつけの美容室のオーナーで担当者である「チエコさん」が、昨年の秋から「ちょっとロンドンに行ってきます」といい始め、何度も店を留守にして、ロンドンに通い始めました。

彼女は、メンタルケアの資格取得のために研修を受け、カットやメイクやネイルの他に「メンタルケア」というメニューを始めるというのです。

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自分レスキュー その3(再生=Reborn)

次のカウンセリングの日、私は再び木造校舎の畳の部屋にいました。

今回は、「再生」の再決断療法の日でした。

私は、「生まれたばかりの私」のそばにいました。実際には赤ちゃんはいないのですが、畳の上に、赤ちゃんを寝かせている「つもり」で、そこを見つめていたのです。いわば「エアー赤ちゃん」でした。でも不思議なことに私には、その赤ちゃんは自分自身であるという感覚がありました。

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自分レスキュー その2(ラプンツェル、髪を切る)

はるさんは町から少し離れた山里に、パートナーの「ダイキさん」と、猫とともに移住して暮らしていました。臨床心理士として働きながら、こどもたちのための研究所の所長もし、一方で、海外や全国に出かけて、心理療法を学び続ける人でした。多忙な彼女に、個人的な申し出をひきうけてもらった私は、ある意味、幸運だったのかもしれません。

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自分レスキュー その1(はるさんとの出会い)

5月のよく晴れた日でした。正面玄関のドアの向こう側から、彼女が現れたとき、空気がぱあっと明るくなるような感じがしました。

薄紫に染められた、麻のワンピース。自然素材のアクセサリー。素顔なのにぱっと人目をひくたたずまい、やわらかい物腰、いきいきとした声、空気感、笑顔。

私は、一目彼女を見た瞬間に、「探していたのは、この人だ。」と思いました。

2015年の初夏のことです。

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