勝ちもない 負けもない

「子どもは親の持ち物」という、日本独特の考え方、強いこだわりのようなものが、この殺人事件にも見えると思います。そうじゃない、あなたのものじゃない、家の中という密室で、あなたが抱え込み、自分の手で始末をつけようなんて、それはしてはいけない、そう私は思います。

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やがて親になる人のために

都会の電車に乗る度に違和感を持ちます。老若男女の中で、赤ちゃんを抱いた人がひどく少ないことにです。この街の子どもたちは、どこにいるのかと不思議に思うほどです。ごくたまに赤ちゃんや小さな子どもを連れた人を電車のなかで見かけると、彼らはひどく恐縮して、身を小さくして、そのひとときをやり過ごそうとしているように見えます。こころなしか、子どもたちも緊張して、顔をこわばらせたり、逆に不安そうにぐずったりしています。この国は、いつからこんなに子どもを育てにくいところになったのだろうと思います。「小さい子どもがそこにいることを許し合う」ことは、発展する社会として当たり前のことだと思うのですが。

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呼吸ができれば

夜、布団の中に入る瞬間、しあわせを感じます。それは「呼吸ができて、今夜も普通に眠るんだ。息ができるって、ありがたい」という思いです。あたりまえに酸素が体内に入ってきて安らかに眠りにつくことができる、なんて幸せなことだろう。ありがたい、ありがたい、とひとりで世界に感謝しながら、幸せな眠りにおちていくのです。

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藤原基央さんについて

BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン=バンプ)のことを最初に教えてくれたのは、当時まだ中学生だった息子でした。そのころ流行っていた「天体観測」や、いくつかのアルバムを聴かせてくれたときから、なにか気になって、私の心に残り続けてきたバンドでした。

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大人の中の子どものこころ

朝から空が青くて、完璧な秋晴れの、その日は私の誕生日でした。一日のうちに、何度か、友だちや子どもからの優しいメールに「今日は誕生日だ」と思い、誰にも言わずに過ごすうちに忘れ、夕方になって思い出し、そしてまた、忘れました。そういう風に一日を過ごしました。

夫が、夜になって、「あ!今日は 誕生日だ!」ということに気づき、慌てて、「おめでとう!」と繰り返し、「朝言ってくれたらケーキでも買ってきたのに!なんで言わんの?」と、黙って誕生日をすごした私に呆れていました。

たしかに。

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楽園はここにある

その土曜日の町では、年に一度の音楽祭のために、背中に楽器を担いだ老若男女が朝から行きかっていました。ほうぼうからアマチュアの音楽好きが集まって、2日間に渡って町のいたるところで、・・公園の野外ステージや、路上や、ライブハウスなど16か所で、30分ずつ、自分たちの公演をすることができるのです。しかもその日は、ワールドカップの試合もあり、イングランドとオーストラリアのサポーターたちが、黄色や白や緑に彩られたラガーシャツに身を包み、町の至る所に特設されたビール売り場に列をなしていました。音楽とラグビー、ふたつのイベントが重なって、不思議なにぎわいを作っています。

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スノードームとアリスのキノコ

今日の画像は、義母の作品です。彼女の目に映るこの世界は、きらきらと美しくて、そこから絵になるひとこまを切りとろうと、義母はいつも目を輝かせています。そんな彼女の生き方を、私は素敵だと思います。

先日、実の母のことを、1938年 とら年生まれだと、書いてみて、改めて気づいたことがあります。義母も、亡くなった伯母も、同じ1938年に生まれたのだ、という事実にです。つまり、3人の女性が3人とも、偶然1938年の、とら年生まれ、ということになります。そういえば、大好きだった「山の家の父方の伯父」も、1926年、昭和元年のとら年生まれでした。すべて偶然のお話です。とらはとらでも、生き方も、性格もまったく違う人たちでした。

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「怒らない」と「怒る」の間。

「怒る」ことは、とても疲れるから、そんな感情そのものを手放したい、と先日つぶやきました。でも、考えた末、やっぱり「怒り」を手放すことはできません。

私の中にある「怒り」に「そこにいたんだね。無視して悪かったね。捨てたりしないよ。そこにいていいよ」と、今日の私は呼びかけます。 “「怒らない」と「怒る」の間。” の続きを読む

 疲れたこころを   

庭の蝉の声は、いつのまにか秋の虫の声に変わりました。ベルに倣って、耳をすませて、季節の変わり目に心を寄せています。そうすると、空気の感触、空と雲、世界のひとつひとつが「もう秋だ」と言ってるような気がします。

最近、朝の目覚まし時計の音を、「鳥のさえずり」のものに変えました。一日のスタートは森の中の響きではじまります。雨の降る日は、目を閉じて、しばらく雨の音に耳を傾けるようにしています。そうするとたいてい、眠りに落ちてしまっています。私は だいぶ疲れているようです。

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最悪の夜の後ろに

雨の夜、クルマのエンジンをかけます。駐車カードを機械に入れ、指定された金額をコインで投入するタイプの有料駐車場です。お腹がすいていたから、運転しながら食べようと、コンビニでおにぎりとお茶を買いました。雨の夜の高速道路は霧のために通行止めになってしまいがちです。スマホで確認すると、さいわい今夜は速度規制があるだけで、なんとか通れそうです。この夜の道を今から一時間半 運転して家まで帰らなければなりません。

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桃の季節  7月7日

やわらかい表面にナイフで傷をつけると、指に従ってするすると皮がむけます。ひろがる香りとともに汁が滴るから、お皿で受け止めなければなりません。荒くカットして口に入れると、めったに味わうことのない旬の味が、口いっぱいに広がって、その瞬間、ああ今日は7月7日だ と、思いました。

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