イギリスへの旅の話4    大学に住む幽霊

ケンブリッジは街全体が大学でした。行き交う学生たちは、毛玉の浮いたセーターを着て、ものすごく古い自転車の荷台に本をくくりつけて走り抜けて行きます。イギリスでの暮らしに少し慣れた3月初旬、私はその街を訪ねたのでした。700年以上のこの大学の歴史を、生い茂る樹木の巨大さが物語っていました。

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イギリスへの旅の話3

11歳のカレンは、落ち着いた性格の、優しい目つきの女の子でした。サラサラの金髪を私にあずけて「編み込みにして」とせがみ、 丁寧に編んであげると、合わせ鏡で、自分の後姿をながめて、うれしそうにしていたのを思い出します。

9歳のデボラは、巻き毛で、遠視用の眼鏡をかけていました。ひょうきんな性格で、サッチャー首相のものまねが得意でした。マイケル・J・フォックスが大好きな女の子でした。

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イギリスへの旅の話2

私が、初めての海外となるイギリスに向かったのは、1986年の春でした。初めてのパスポートを取り、初めてのスーツケースを借り、初めての飛行機に乗って成田空港に行き、初めての海外への航路に乗ったのです。20歳でした。

飛行機は、キャセイパシフィック機でした。バーレーンで給油したので、23時間かかる長旅になりました。地球の回転に逆らって飛ぶということが物理的にどういうことなのか、よくわからないながら、窓の外の雲海を夕日がいつまでも照らしていたような気がします。(逆に帰りは、短いうちに何度も夕日と朝日が訪れていたような記憶があります。)

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遠くに行きたい 小3一人旅 そしてイギリスへ1

ずっとずうっと遠くへ行きたい

こどものころから、「ここではないどこかへ行きたい」と、願う思いが心のどこかに、いつもありました。

初めて一人旅をしたのは、小学校3年生の秋でした。一人でバスに乗って、母方の親戚の家に一人で泊まりに行きました。

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1984年 あのころの大学の空気

1984年の春のことでした。

私は大学生になりました。地元の大学でした。いよいよ受験校を決めるというときになり、突然親からすすめられたその大学は、それまで希望していた他県の大学とはちがい、山のなかにあって、周囲にほとんどなにもなく、華やかさのない大学でしたが、私は言われるまま進路希望を変更していました。親に逆らうという発想自体がなかったからです。

一度きりの受験が私に許されたのは 授業料も安く、実家から仕送りを受けずに卒業する友人もいたほどの、苦学生にも優しい大学でした。  “1984年 あのころの大学の空気” の続きを読む

その手はくわない

「働く女性の声を受け『無職の専業主婦』の年金半額案も」というネット配信の記事に対し、「働く女性」達から、「そんなこと一言も言っていないのに」「勝手に対立構造を作るな」と批判が殺到している・・・という話題が盛り上がっていますね。さすがに 私も 驚きました。

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「イベント家族」からの逃走(!)

「連休、どこか行きますか?」「休みはどうしますか?」そんな会話を聞きながら 子どもが小さかった頃は、頑張ってあちこちに遠出していたなあと思います。

でも家族4人とも社会人になったばかりの今年の気分は、「休みは休もう」と思います。「ただ休みます」それが理想の連休の過ごし方です。

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おせったいの季節

地元のスーパーマーケットに入ると、色鮮やかな麩菓子をつめた巨大なビニール袋が目に飛び込んできます。なんの前触れもなく「お接待菓子(おせったいがし)」のコーナーが、ある日突如として出現するのです。春です。季節感のかたまりのような「おせったい」のシーズンが今年も近づいているのです。

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